文化部部室棟の一番奥。正確に言うと校門より一番遠い場所で、行き帰りにも一苦労しそうな場所に、そこはあった。本来部活動名の看板が掛けられてあるだろう場所には、白紙の看板が掛けられており、みるみるうちに嫌な予感がしてきた。窓付のドアが設置されているが、その窓はひび割れており、しばらくこの場所が整備されていない、ということがはっきりと見えてくる。
 岡崎が扉を開けると、その状況が明らかとなってきた。
 そこにはどこのものとも分からない段ボールが山積みとなっており、机こそあるもののすっと指で触れてみると埃が付着するほどだった。椅子は見つからないが、部屋の片隅に何個かパイプ椅子があることから、とにかくそこに関しては問題ないだろう。

「ここは昔漫画研究会が使っていてな。だから、見て分かると思うが大量の段ボールは元々その同好会のものだ」
「中に何が入っているんですか?」
「漫画と、小説。それと漫画関係の画材の余りだったかな。一目見れば分かると思うが、壁の一部が本棚になっているだろ? まあ、それは自由に使ってもらって構わないぞ。何せ、それは学校の所有物にもなっちゃいない、空に浮いたものだからな」
「良いんですか? 図書室に寄贈すれば……」
「寄贈出来るものであるかどうか、確認したよ。図書室にも限界があるからな、入りきれないモノだからこそ、ここに入れているんだ。お察しの通り、ここは倉庫と同じ扱いだよ」

 倉庫、か。
 こんなところを部室にするのもちょっとどうかと思うけれど、まあ、致し方ない。寧ろ入学初日で同好会を結成出来ること自体がおかしな話であって。意外と学生規約はあっさりとしているものなのかもしれない。あっさり、というよりかは自由なもの、と言ったほうが正しいようにも思える。

「……もし活動を進めていくならば、掃除をすることが先決だろうな。いずれにせよ、この空間はまだ同好会としての活動をするにはあまりにも汚すぎる。あの段ボールは別にせよ、人を増やしていくつもりならせめてこの机だけでも綺麗にしておくと良いぞ。ああ、あとこれが同好会の決まり。ルールみたいなものだな。直接関係することは……やっぱり『報告書』かな」
「報告書?」
「簡単なこと。月報だよ。一ヶ月にその同好会はどう活動していったか。人はどれくらい増えたか、また減ったか。それについてを簡略的に記載し、同好会の責任者である御園先生に提出する。それが報告書だ。それに応じて同好会に降りる予算も変わってくるからきちんと書けよ。あと、予算を増やしたいからと言って水増しもよろしくない。最近よく話題になっているだろ? 粉飾決算とか、そういうものになってしまうからな。さすがに法律に問われることはないが、学生規約には違反することになるから、即刻同好会は解散となる。ま、せいぜい頑張ってくれ」

 言いたいことだけ言って岡崎は部室を後にした。
 残されたのは俺と明里の二人きり。

「取敢えず、掃除と行きますか」

 パイプ椅子を一つ開くと、そこに鞄を置く明里。
 それを見た俺もまたパイプ椅子に鞄を置いた。
 運が良いのか悪いのか、ロッカーには雑巾とバケツ、それに箒に塵取があった。水は水道の蛇口が部室に備え付けになっているからそこから使えば良いし、案外掃除の手間も難しくないのかもしれない。

「それにしてもこの部屋、エアコンついているのね。ま、一応設定温度はこの温度までにしろ、という決まり文句が張られているけれど。過ごしやすい空間であることは間違いなさそう」
「お前は部室を私室にでもするつもりか」
「部室の半分はそんなもんでしょう?」

 箒を手に取って明里は溜息を吐く。
 その発言は真剣に部活動に取り組んでいる人間からすれば、文句の一つでも言われてもおかしくないような発言ではあるが、案の定ここには誰も居ないため、特段問題は無いだろう。

「……ま、いいか。で、記憶探偵部っていったい何をするんだ?」

 掃除が七割方終わったところで、俺は漸く一息吐いた。部室棟の南端――とどのつまりこの部室より一番遠い位置――には自動販売機があるため、そこで飲み物を購入してきた。何を買ったかというと、スポーツドリンク。別にスポーツというスポーツをした覚えはないが、汗をかいたからこれはスポーツという扱いで何も問題は無いだろう。
 明里はオレンジジュースを一口飲むと、それを綺麗になった机に置く。ちなみにオレンジジュースは俺と明里がジャンケンをした結果俺が負けたために購入してきたものだ。つまり俺のおごりというわけだが、明里はそれがさも当然と言った感じであまり感謝をしていないらしい。この女、いつか痛い目に合うぞ。感謝の気持ちを知らない人間は、いつか感謝の気持ちを知らなかったことが原因で痛い目に合う――なんてことは定石だ。

「正確には、記憶探偵同好会、ってことになるのかな。部活動じゃなくて同好会になっちゃったから。ま、名前が違うところで結局は活動内容は一緒なのだけれど」

 長い前置きをした上で、明里は話を始めた。

「あなた……、『記憶』についてどれくらいの知識があるかしら?」
「記憶? そりゃ、人間が、生物が覚えることの出来るもの、という認識か? 人間で言えば脳の中にある海馬がメモリーの役割を果たしていて、脳にある電気信号で伝達するとか、それくらいしか知らないぞ。まあ、それくらいなら中学校の理科を習っていればある程度は分かる話だと思っていたが」
「その通り。記憶には幾つもの種類があるけれど、その中でも長期記憶にフォーカスを置いたのが記憶探偵」
「長期記憶?」
「例えば今ここに十桁の数字があるとして、それを五分以上覚えることは出来る?」
「出来ないだろうな。言い続けていれば、或いはどこかに書き記しておけば可能かもしれないが」
「それが短期記憶という。因みにあなたが言った『言い続けていれば可能だろう』というのは維持リハーサルという行為ね。それをしなければ人間の記憶というのは僅か数十秒ももたない。それが短期記憶というもの。長期記憶はそれに反するもの。つまり、」
「長い間覚えている記憶、ということか?」

 俺の言葉に明里はゆっくりと頷いた。

「ま、そういうこと。長期記憶はさらに陳述記憶と非陳述記憶に別れている。言葉で表現出来る記憶が陳述記憶だとすれば、そう言い切れない記憶が非陳述記憶、ということ。身体で覚えている習慣的になっているものが、非陳述記憶と言ってもいいかもね」

 長期記憶の中でも、陳述記憶と非陳述記憶がある。それは分かるが、そのことと記憶探偵がどう結びつくというのか。

「私が問題としているのは、その中でも後者。非陳述記憶にあたる方よ。身体が覚えている習慣、とは言ったけれど簡単に言ってしまえばそれは潜在的に染みこまれた記憶と言っていいでしょう。その記憶の中に忍び込み謎を解き明かすのが私の役目」
「記憶に……忍び込む? どうやって?」
「BMI端子があればそれを使えば良いけれど、無い場合はこれを使う」

 そして鞄から何かを取り出した。
 それは白い箱だった。箱を開けると中にはイヤホンのようなものが入っていた。
 いや、正確にはコールセンターのお姉さんが付けているようなヘッドギアに近い形、と言えば良いだろうか。いずれにせよただのイヤホンでは無さそうだ。

「これはまだ試作品と言われている、無線で脳の記憶に干渉する機械ね。無線で被験者の脳に流れている電気信号を解析し、海馬から記憶を得る。その記憶に飛び込む、ということ」
「ちょっと待ってくれよ。記憶に飛び込むってそんな簡単に言うけれどさ」
「勿論。簡単なことではない。記憶はそこに滞っているわけではないからね。大きな流れというものを考えてもらえば良い。河川の中に飛び込めば無事ではないということは、君も分かっているだろう? まあ、そのために『命綱』も用意しておくし、安全装置が働けば無事に帰ってくることが出来る。非常にシンプルで聞き分けの良いシステムなのだがね」

 そんなことは言っているが、俺にとってはさっぱり理解できない。
 もっと言ってしまえば、どうして俺を呼んだのかも分からない。

「……なあ、なんで俺を呼んだんだ? 数合わせが理由なら、別に誰だって良かったはずだろ?」
「一つ。先ず部活動はさっさと創部してしまう必要があった。困っている人間を助けないで何が探偵だ。そしてそのためにもメンバーを決める必要があったが、」
「まさか、そのためにあの挨拶を?」

 あの挨拶は、気を引くためにわざとやった、と?

「まあ、そういうことになるな。それにしても意外と食いついてこなかったのは想定外だった。まあ、一人釣れただけでも良しとしようか」
「おい、今釣れたと言ったな? 何かの詐欺か何かかよ。だったら俺は帰るぞ」
「いやいや、もう無理だよ。もう乗りかかった船だ。最後までやってくれたまえ」

 帰ろうとする俺を強引に引き留める明里。
 意外にも明里の腕力は強く、簡単に引き留められてしまった。

「分かった、分かったよ。……こっちだって乗りかかった船だ。ある程度は居てやる。けれど、俺はいったい何をすれば良い?」
「助手だよ」
「は?」
「探偵には助手が必要だろう? シャーロック・ホームズにおけるワトソン博士のように」

 あまりミステリーには興味が無いのだけれど、とどのつまり助手をしろ、と。
 いったい助手の役割はなんだろうか、と明里に問いかけようとしたが、明里は首を横に振った。

「言わずとも分かるわ。あなたが何を言いたいのか、ね。とどのつまり、助手はどういう役割を持つかということよね。助手は、簡単に言ってしまえば何でも屋よ。だって仮にあなたがBMI端子を装備しているところで使い道が分からなければ意味が無いでしょう?」

 それを聞いた俺は目を丸くした。

「あら。……まるで、『何でそれを知っているんだ』って表情ね。だって当然じゃない。変に襟足が長くなっているし、たまに金属の端子が見えているわよ。まあ、BMI端子を実物で見たことがない人だったら、分からないくらいカモフラージュされているけれど」
「……そうだったか」

 俺の身体には、BMI端子が組み込まれている。
 それはミルクパズル症候群が原因ではあるけれど、罹患者ではない。心配症だった祖父がどうしても手術を受けろと言うものだから受けただけに過ぎない。
 でも、世間から見るBMI端子=ミルクパズル症候群のイメージは根強いままだ。
 やはりどうしてもミルクパズル症候群ではないか、と疑われることが多かった。
 お陰で外に出るときは帽子かパーカーが必須となった。さすがに職務質問を受けることはないが、お陰でBMI端子を隠すことは出来た。
 しかし、学校ではそうはいかない。帽子を被って登校なんてこと出来るはずも無いし、学校側がそんな特例を認めたら、直ぐにミルクパズル症候群の可能性を疑われてしまうし、そもそも他の学生もその特例をうまく利用できないかと考えるはずだ。
 いずれにせよ、俺はそれがばれないように何とか襟足を自然に伸ばし、BMI端子がある部分が見えないようにしているつもりだった。因みにBMI端子にはカバーをつけているが、それでも肌色と少し違う色になってしまっているために、どうしても違和感が生まれてしまう。

「ま。そんなことはどうだっていいのよ。今の人間はBMI端子があるということは、イコールミルクパズル症候群の罹患者だと勝手なイメージを抱いているけれど、それこそが大きな間違い。BMI端子があるということは人間の中で次のレベルに進んでいる『進化した存在』と言ってもいい。脳は人間が解析することを許されなかった、神のみぞ知る領域だったわけなのだから」
「……つまり俺は、雑用をすれば良いということなんだな?」

 話を戻すために、俺は明里に言い放った。
 明里はうっすらと笑みを浮かべると、やがてゆっくりと頷いた。

「分かっているじゃない。つまりそういうことよ。雑用と言っても評判が広まればきっとあちらから客はやってくるはず。客じゃなくても私たちに協力したい人間も必ず出てくるはず。そのためにも精力的な活動を地道に続けていかないとね」

 鐘が鳴ったのは、ちょうどそのときだった。
 確かこの学校は午後六時には鐘が鳴るはずだ。ということは今は午後六時。初日からこんな時間まで学校に居る新入生は少ないはずだ。急いで帰ったほうがいいだろう。

「……と、もうこんな時間ね。細かいことはまた明日から始めましょう。とにかく、記憶探偵同好会は今日からすべてが始まるのよ!」

 そう言ってロッキーのテーマを口ずさみながらそそくさと明里は帰っていった。
 部室棟の各部屋は最終退席者が鍵を閉めることとなっている。とどのつまり、二人しか居ないこの同好会で鍵を閉める役割となるのは――俺だ。
 仕方ない。あいつが帰ってしまったことに関してもう咎めることはしない。というか咎めたところで何も始まらないだろう。そう思って俺は部屋の掃除を始め、三分後、部室の鍵を閉めるのだった。


 ◇◇◇


「部活、終わったんですね」

 俺に誰かが声を掛けてきたのは、部室の鍵を閉めたちょうどそのタイミングだった。
 最初は明里が忘れ物でもしたのかと思っていたが、どうやらそうでは無さそうだ。
 そこに立っていたのは、赤がかった黒髪の少女だった。制服は同じだからここの学生のようだ。優しそうな表情をしている。優しさを擬人化したらこんな感じなのだろう――なんて軽快なジョークを送ってしまうくらいには、彼女の優しさが滲み出ていた。

「……君は?」
「私は、登坂舞(とさかまい)と言います」

 彼女は自らをそう名乗った。
 舞は話を続ける。

「あなたは、記憶探偵同好会に入部したのですよね?」
「入部、というよりかは入会になるだろうけれど」
「良かった」

 それを聞いた彼女は胸をなで下ろした。
 いったい俺に何を期待して、その発言をしたのだろうか。まるで俺が記憶探偵同好会に入会することを最初から分かっていたような――或いは気にしていたような、そんな発言だった。

「どうして、俺が入会して『良かった』という結論になる? 一応言わせてもらうが、俺は勝手にあの女に入らされることになったんだぞ?」
「いいえ。それで問題ないんです。あ、自己紹介まだ終わってなかったですよね」

 そこから舞は自分のことについて話し始めた。自分は俺と同じ一年生であること。高校入学を機にこの街で一人暮らしをしていること。一人暮らしは不安であるが色々と頑張っていること。
 すべてが他愛もないことだらけだった。けれどやっぱり不安は払拭されなかった。
 どうして彼女は急に俺に接近してきたのだろうか? 校門への近道、というわけでもないだろう。一年生の教室から校門へ向かうには、ここを通るルートははっきり言って遠回りだ。にも関わらず、このルートを通っているということは――わざわざ俺に会いに来た?
 でも、どうして?
 仮にそういう結論に導いて、信じて疑わないとするならば、それは単なるナルシストだ。
 普通ならばこのルートをこの時間に通ることに関しては、疑問を抱くはずだ。

「あ、あの。すいません。実は、職員室で記憶探偵同好会の話を聞いていて」

 そこで俺は少し納得した。そういえば先程記憶探偵同好会の件を職員室で話をしていたからだ。大声ではなかったが、それなりに声のトーンは大きかった。あのタイミングで職員室に居る学生がいれば耳に入ったのも何となく頷ける。
 だが――だとしても。

「それで、どうしてここに? まさか……」
「ええ。そのまさか、です。入会を希望していたのですけれど、もう会長さんは帰っちゃいましたよね?」

 よく見ると彼女の手には一枚の書類が握られていた。
 そしてそれは『入部届』と書かれていた。
 ……嘘だろ。そんなこと、有り得ない。
 どうしてまだ活動内容も定まっていない部活動(正確には同好会だが。ええい、面倒だ。そこら辺の説明については面倒だから今後は割愛する)に入部しようとする? さすがに面白半分にしては冗談が過ぎる。

「実は、私はBMI端子がありまして」

 再度、衝撃が走る。
 普通、BMI端子が埋め込まれている人間は自分からそう話すことはない。ミルクパズル症候群の罹患者と勘違いされて迫害――表現を和らげるならばいじめられる――可能性が大いに有り得るからだ。だから俺は大いに驚いたし、目を丸くしていた。
 そしてその驚きは、きっと舞にも届いていたのだろう。舞はおどおどとした表情で、俺に話を続けた。

「ええ、ええ。きっと、そういう反応を取られるでしょうね。確かに、私は今まで人にBMI端子を埋め込まれているということを話したことはありません。けれど、記憶探偵同好会に入会しようとした理由も、それが原因なんです」

 成程。まるでパズルのピースが一気にはまるかの如く、結論が生み出される。
 彼女は救いたいのだ。同じようにミルクパズル症候群に悩まされる人間を。そして記憶の謎に悩む人間を。だから彼女を頼り、この場所にやってきたに違いない。
 しかし、残念なことに――もう彼女はここには居ない。きっと明里がいるならば、喜んでいたに違いない。人数は増やしていくとは言っていたが、まさかこんなにも早くやってくるとは思わなかったからだ。

「……取敢えず、会長はもう帰った。また明日来ると良いと思うよ。会長に直接それを渡したほうがいいだろうし」

 人数と入った順番を考えると俺が副会長になるのだから、俺がその入部届を受け取っても良いのだろうが、直接渡してもらった方が良い。それにもし考え直すならばその機会を与えた方が良い。彼女にとってはもしかしたら勝手なことになるかもしれないが、それについては俺からの温情だと思ってくれて構わない。
 舞はそれを受け入れると、深々と頭を下げて校門の方へと走り去っていった。
 そして俺は彼女の姿が見えなくなるまで見送ると――ああそういえば一緒に帰ろうとでも一言言えば高校生活が華やかなものになったかもしれないな、なんて雰囲気をぶちこわす言葉を独りごちり、部室の鍵を返すべく職員室へと戻るのだった。


 ◇◇◇


 家に帰り、食事を取る。妹が遅かったから何かあったんじゃないかと探りを入れてきたが、そんなことは何にも無いとだけ言って自分の部屋に入った。妹は俺と三つ違いで、ちょうど同じ日に中学校に入学した。中学校と高校の距離は自転車を漕いで十五分ほど――正確に言えば山の上にあるのが高校で、山の下にあるのが中学校だ。
 俺は今日のことを思い返す。今日は何だかんだで色々とあった。
 衝撃的な明里の自己紹介から始まり、そのまま同好会の結成へと至ったわけだが、まさかその日のうちに新しいメンバーと思われる同級生に出会うとは思いもしなかった。まあ、彼女はきっと今日のうちに考え直してくれるんじゃないか、なんてことを考えていたわけだけれど。それは決して明里と二人きりになりたいとかそういう理由ではなく、明里のとんちんかんなこと――やることはとんちんかんには見えないが、傍から見れば訳の分からないことだ――に巻き込む道理はない。そう思っていたからだ。それがたとえ同じBMI端子を埋め込んでいる『同志』であったとしても。

「お兄ちゃーん、お風呂空いたよー」

 妹の声が階下から聞こえて、思考が中断される。ああ、取敢えず風呂でも入って今日のことをリフレッシュすることにしよう。今日は高校生活一日目にしては色々なことが起こりすぎた。いくら何でも最初からアクセル全開過ぎだ。最初からこのペースじゃ、一年の終わりにはどうなっているのだろうか、なんてことを思いながら俺は着替えを持って自分の部屋を後にするのだった。


 ――そして激動の高校生活、その一日目はこうして幕を下ろすのだった。




第一章 終

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