モーニングサービス (メニュー:特製モーニング)



 ドラゴンメイド喫茶、ボルケイノ。
 どんな世界や時間軸とも接続できる第666次元軸に存在する喫茶店も……いや、このモノローグはいつまで続ける必要があるんだ? 確かに新規で入ってきた読者にとってみれば初めてのエピソードであるから、簡単に世界設定を説明するのもやぶさかではないけれども。

「……ううむ」

 ボルケイノ唯一のコックであるメリューさんはスマートフォンを片手に何かを見ている様子だった。何で異世界でスマートフォンが存在するんだ??って? 異世界でスマートフォンを使って活躍する作品があるぐらいだし、それぐらいは大目に見てくれても良いのでは?
 まあ、正直に言うと、通信手段のために俺が買い与えた??格安SIMを契約して、ね。こんな異世界でも電波が来る仕組みについては、ちょっと分からないけれど。

「メリューさん、どうしたんですか?」
「いや、これを見ていてな」

 メリューさんが見ていたのは、どうやら動画サイトのようだった。動画サイトは色んな動画がこれでもかと掲載されている。クオリティも大なり小なり分かれていて、それが再生数や高評価に直結していることを踏まえると、たかがインターネットなどと思ってはいけないのだろう。
 それはそれとして。

「どうやら、ホテルというところで出しているモーニングという料理の動画らしいんだがな」
「その動画が何か?」
「いや、何……。朝からこのクオリティの料理を食べられるというのは、すごい恵まれているなと」
「はあ、そりゃあまあ」

 戦争や紛争こそ起こってはいるけれど、部分的に平和な国は多いからね。
 どの国と明言するつもりは毛頭ないけれど。

「それで? まさかボルケイノにも導入しようと思っているんですか?」
「鋭いな」

 そりゃあまあ。
 何年の付き合いか分かったものではありませんから。

「どんなメニューが良いと思う? 尤も、ここは異世界だ。どんなメニューが良いかどうかなんて、実際に客に食べてもらわない限りは何とも言えないところがあるがね」
「どうでしょうね。まあ、シンプルにトーストはどうですか?」
「焼いたパンか。悪くない」

 メリューさんは、俺のアイディアに相槌を打つ形で、どんどんメニューを決めていきたいらしい。

「あとは何が良いかなあ」
「ヨーグルトもつけましょう。健康第一です。朝食をしっかり食べると健康に良いっていう話を何処かで聞いたことがあります」
「そりゃあ間違いないが……」
「じゃあ、そうしましょう」

 そんな会話を重ねて、漸く生み出された??『ボルケイノの特製モーニング』。
 それが、今俺の目の前にある。


 ◇◇◇


 ワンプレート型のモーニングである。
 半分に切られたトーストに、スクランブルエッグ。刻まれたキャベツと水にさらした玉ねぎには特製ドレッシングがかかっている。フルーツにはオレンジが添えられていて、その横にはガラスの小さな容器に入ったヨーグルトも添えてある。
 ボリュームは然程多くはないけれど、朝食だからこんなものだ。

「ジロジロ見ていないで、味の感想を教えてくれると有難いのだけれどね?」

 おっと、そうだった。
 それじゃあ、いただきます??と。
 まずはトーストから。一枚でも良いんじゃないかなとか思ったけれど、女性はこれでも多すぎる、というのがサクラから意見として上がったので取り入れた。
 トーストの焼き加減は本当にちょうど良い。さっくりと仕上がった表面だけれど、いざ食べてみると中はふんわり焼き上がっている。どうやって焼き上げたんだろう? トースターなんてものはないもんな、なんて思いながら次に何を食べようかと色々と考える。
 数瞬の思考ののち、次に食べたのはサラダだ。サラダはシンプルにまとまっていて美味しい。
 そいでいて、次に食べたスクランブルエッグもあっさりとした味付けで……なんというか、全体的にシンプルでまとまっている気がする。これで良いのだろうか? まあ、でもモーニングってこんなものか。モーニングからいきなりしょっぱい食べ物を食べる気にはならないし、それでも良いのかもしれないな。
 その後はヨーグルトもオレンジも食べて、あっという間に完食してしまった。
 メリューさんは俺の顔をじっと見つめている。
 きっと感想を求めているのだろう。そう思って、俺は口を開いた。


 ??おそらく、これからこれがボルケイノのメニューの一つに加えられるのだろう、そう思うと少しだけ誇らしい気分になるのだった。




TOP