未知との遭遇 (メニュー:カップラーメン)


「……これは何だ? ケイタ」

 ドラゴンメイド喫茶『ボルケイノ』。
 あらゆる異世界と接続することが出来る、異世界唯一のドラゴンメイドが勤めている喫茶店だ――ちょっと言い回し変えました? まぁ、毎度毎度同じこと言ってもねぇ。それはそれでどうかと思うけれど。
 さて、閑話休題。
 何故メリューさんがそんな言葉を口にしていたかというと――。

「ケイタ、これは何なんだと聞いているんだが?」

 メリューさんが持っているのは、カップラーメン。
 俺たちの住んでいる世界ではポピュラーな、お湯を入れて三分間待つだけで出来てしまう、あまりにも簡単な、あまりにも便利すぎるアイテムだ。
 しかし、ある種当たり前ではあるけれど、メリューさんがそれを知っている訳もなく……、今回お試しで持ってきてみた、って話だ。

「それはですね、食料です。お湯を注いで少し待つと……美味しいですね食事が出来上がるんです」

 それを聞いてもなお、メリューさんはきょとんとした表情を浮かべている。

「……ケイタ、それマジか?」
「いや、マジっすよ?」

 言い返してはみるけれど、メリューさんはまだまだ納得していない様子である。
 ならば、百聞は一見にしかず。
 一度見て、食べてもらおうではないか。
 そう思い、俺はお湯を作るべくキッチンへと向かうのだった――。


 ◇◇◇


 キッチンはメリューさんの専売特許で、俺には触れないのではないか、って?
 答えはノーだ。仮にそうだとしたら、俺はどうやってコーヒーを作らねばならないのだろうか。
 お湯を作るぐらいなら誰にだってできるし、メリューさんはそれを禁止さえしていない。
 だから、何の問題もないのである。
 お湯を注いで、スマートフォンのタイマーで三分間計測する。
 あとは、ただひたすら待つだけだ。


 ◇◇◇


「出来ましたよー」

 俺の言葉を聞いて、メリューさんは首を傾げる。

「本当に出来たのか……?」
「勿論。嘘は吐きませんよ」

 メリューさんの前にカップラーメンを差し出す。
 蓋は外しているし、箸も置いているので、あとは食べるだけである。

「……確かにラーメンだ……。しかし、少し固まっているような、そんな感じがするか……?」

 ご明察。
 お湯を入れていることで、麺や具材がふやけて、食べられるようになっているのだ。
 それに瞬間的に気付くとは、流石は料理人といったところだろうか。

「香りも良い」

 匂いを嗅いで、一言。
 そして恐る恐る――メリューさんは一口それを啜った。
 メリューさんの目が思いっきり開かれた。

「……美味い!」

 メリューさんはそう言って、次の一口に移る。
 喜んでもらえたようで、何より。
 俺はそう思いながら、自分の分を作るべく、再びキッチンへと戻っていった――。



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