18. 金谷くんと生徒会1


 金谷俊が生徒会会長に就任したことで、何が変わったか。
 それについて簡単に説明しなければならない。

「兄さんには、是非とも生徒会に入って貰いたいんだよね」
「断る」
「どうしてさ! 別に問題無いだろ、入ったって。寧ろ先生からの評価も上がって、待遇が良くなるぐらいだ!」
「俺はそんなの、求めてない」
「兄さんのわからずや!」
「分からなくて良い」

 金谷俊が毎日のように、金谷くんを求めて(ええと、この場合はややこしいのだけれど、金谷くんはあくまでも兄である明くんを求めてやってきている、というわけで)やってきている。
 そうして何度も金谷くんにアプローチをかけてくるんだけれど、金谷くんは毎回ああいうそぶりで、まるで関心を持っていないように見える。だからいつも大口叩いている会長が失敗しているそぶりを、わがクラスは目撃するようになるのだった。それも、ほぼ毎日。

「ねえ、金谷くん。さすがに、弟くんが可哀想な気がしてならないのだけれど」
「可哀想?」

 金谷くんは、私の言葉を聞いて踵を返した。

「昨日まであれほど文句を言っていたくせに、急に生徒会に入ってくれというのは虫が良すぎる。違うか?」
「それは……違わない……けれど……」
「金谷、やめたげなよー」

 言ったのは優奈だった。

「何だ、優奈か。君には関係の無い話だろ」
「友達が傷つけられていて、関係無いもないだろー?」

 優奈の言葉を聞いて、虫の居所が悪くなったのか、それ以上金谷くんは何も言わなくなった。
 それで解決した、となればいいのだけれど。
 残念ながら、それで解決と行かないのが学生生活というものだと思う。

 ◇◇◇

「兄さん! 今日こそ入って貰うぞ!」

 次の日も、俊くんはやってきた。

「また来たよ、生徒会長……」
「ってか、ああまでなると、もうブラコンの類じゃね?」

 言ったのは、私と仲の良いミキだった。マキとミキ。似ている名前なので、良く間違えられる。まあ、仲が良い理由もその名前が似ているからこそ、だったりするのだけれど……。

「つーか、あんだけ生徒会長が来てるんだから試しに入ってみれば良いのに、生徒会」

 言ったのは優奈だった。優奈はいつも余計な一言を付け足してくる。辞めた方が良いのに、と言っても付け足してくる。それはもう彼女の性格で固定されてしまっているのだと言われてしまえば、仕方ないような気もしてならない。

「……俊。お前が頼ってくると言うことは、つまり『そういうこと』なんだよな?」
「え、」
「そういうこと、なんだよな?」
「う、うん。そういうことなんだよ。なあ、頼むよ。頼めるのは、兄さんしか居ないんだ」
「……仕方ない。分かったよ。その代わり、」

 すっと、金谷くんは立ち上がると、

「飯野さんも一緒に連れて行っていいかな?」
「……え?」

 ……何だか、厄介な問題に巻き込まれてしまったような、そんな感覚を私はひしひしと感じるのだった。





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