20. 金谷くんと生徒会3


「……いや、どうしてその発想に至ることが出来る訳なのか、説明して貰いたいのだが」
「え?」

 ミキの発言は、いつも突拍子もないことだ。
 けれど、おかげさまというか、何というか、それで助かっているタイミングがあることも忘れてはならない。

「だって、人が居ない訳でしょう? 最初、呼ばれたときはどうしてかな、と思ったけれどこれを見て納得。そういえば金谷俊くんってあんまり人望無さそうだし」
「なっ……」
「そして、そもそもあなたが嫌いな人間も多いから、受けてくれるかどうか危ういし」
「なんだと……!」
「そして、これが一番のポイント」

 びしっ! と指を一本差して言ったミキ。

「あなたのプライドは高すぎる。だから、誰も受けてくれる人が居なかったとしても、わざわざ頭を下げて『お願いします』と言える訳が無い」
「ぐっ……」

 それ以上、やめてあげて! プライドはもうずたずただよ! と言ってあげたくなるぐらいの論争――いや、一方的な場合は『論争』になるのだろうか――だった。
 要するに、一方的に不利な状況であるということ。
 そして俊くんは、これ以上引っ張るということも出来ないということ。

「……いつまでだ? いつまでに人員を確保すればいい?」

 溜息を吐いた後、明くんは、俊くんにそう言い放った。
 俊くんは、ミキの突き刺さるような言葉にどうすればいいのか分からなかった状態だったのか、それを助け船と思って、直ぐにそちらに向かって言った。

「えっと、明後日だね。明後日までには、役職が決まっていないと……」
「いい加減にしろ。相談するならもっと早く相談しておけ」
「だって! 受かるかどうか分からない選挙だった訳だし」
「いいや、嘘だね。お前はあの選挙で勝つことが決まっていた。否、勝つことが分かっていた。対抗馬が居なかったからだ。いや、正確には居たけれど、お前の実力には適うはずが無かった、ということだ。その意味が分かるか? その言葉の意味を噛みしめてから、僕に『お願いします』と言うんだな」

 助け船を出された、と思っていた俊くんにとって、大打撃の一撃だった。
 もっとも、彼らの仲が良い様子など確認出来るはずも無かったから、その攻撃は『当然』と言えば当然のような気もするのだけれど。
 俊くんは、慌てているように見える。それを見て、さらに明くんは話し始める。

「そもそも、だな。僕に『偶然』勝てたから、試験の成績で勝ち誇ったり、生徒会長の選挙に立候補して僕とは正反対の道を進むかと思いきや、僕を思いっきり頼ってきたり。お前はいったいどこへ向かいたいんだ? 頼りたいなら、頼りたいと言えば良い。頼りたくないのなら、頼りたくないと言えば良い。それだけの話だ。それだけの言葉だ。それだけの……事実だろう」

 ◇◇◇

 その後の顛末を簡単に。
 結局、俊くんのほうが根が折れて、簡単に言えば、こう言ったのだ。

 ――助けてください。よろしくお願いします、と。

 その一言で、だったら仕方が無いということで、私たちは生徒会の要職に就くことになった。
 ミキが運動部、優奈が文化部の委員長、私が会計、そして副会長のポストには――。

「結局、こういうことになるのか」

 溜息を吐きながら、副会長の席に座っているのは、明くんだった。
 こうして、私たちは生徒会という同じカテゴリの中で、活動することになるのだった。
 そして、二月は、そんな生徒会の立ち上げとかどうこうで、あっという間に過ぎ去っていくのだった。

2月編 完






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