24. 金谷くんと卒業式1


 卒業式。
 三年生がいなくなり、事実上、二年生が最高学年となる僅かの期間の開幕でもある。
 そして、今まで仲良くしてくれた先輩がいなくなる時期でもある。
 高校二年生も終わり、三年生にもなれば、進路を決める時期となっていく。
 進路、か。
 私はどこに向かおうか。僕はここに向かおうか。なんて会話が出てくるようになった、そんな昨今。
 私は――この前の告白のことについて、頭がいっぱいになっていた。

「……マキ」
「ううん……やっぱり返事は出した方が良いよね……」
「ちょっと、マキ!」
「へ?」
「へ? じゃないよ! 片付けをしないと私たち、永遠に帰ることが出来ないんだよ?」

 そう言ってきたのはミキだった。
 ミキの言葉を聞いて、私たちは卒業式の片付けをしていることを漸く思い出した。

「あ、そうだった。ごめんごめん。ちょっと、考え事をしてて」
「考え事?」
「え? あ、ううん。何でもないよ」

 パイプ椅子を片付けて、テーブルを片付けて、レッドカーペットを片付けて。
 片付けが終わった頃には、既に空は真っ暗。急いで帰らないといけない時間になってしまっていた。

「今日は皆さん、ありがとうございました。……取りあえず、ジュース奢りますよ」

 すっかり毒の抜けた生徒会長、俊くんがスーパーの袋から一本ずつ缶ジュースを取り出してきた時には流石に驚いた。まさか俊くんがそんなことをやってくれるとは思いもよらなかったからである。

「……何ですか。僕がこんなことをするとは思いませんでしたか」

 じろじろと見てしまったためか、生徒会長にそんなことを言われてしまった。

「いや、そんなことは無いけれど。……ちょっと、変わったよね、って思って」
「やっぱり思ってるじゃないですか」
「あら。そう取られちゃう?」

 だったら仕方ないか。そう取られてしまうなら、仕方ない話だ。

「……私は別に変わったなんて思わないけれどな。寧ろ、元々がこういう性格だったんじゃねーの? って感じ」

 言ったのはミキだった。
 ミキはいつも鋭いところを突いてくる。
 ミキの言葉はいつも鋭い。だから、話を聞いているだけでもかなり痛いところがあったりする訳だ。まあ、実際に聞かない人間からすれば、そんなこと知ったことでは無いみたいな言い分をするのかもしれないけれど。
 缶ジュースで乾杯。誰も居ない体育館は、ちょっぴり怖かったけれど、貸し切りという気分を味わえるだけでもここに居る価値があるってものだった。

「……それにしても、私たち、三年生に上がるんだねえ」
「ミキは大丈夫なの、そこのところ? 進級出来そう?」
「マキ、さては私を馬鹿にしているな? 流石にそれくらい出来るわ!」
「なら、良いけれど。生徒会から留年メンバーを出す訳にはいかないもんね」
「ああ。その場合は、即刻生徒会から脱退してもらうことになるからな」






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