1. 古都ラスザッド-1
数十年前、勇者が果敢に戦い、邪神を斃した。
勇者は神にその才能を授けられ、二人の従者と聖なる武器を手に戦い――ついぞ邪神を滅ぼしたのだった。
そして、その後に勇者とその一行は、国王より賜るはずの栄誉や名誉を断り、再び旅に出た――そう、言われている。
だから、勇者とその一行の末裔は、表舞台に決して出てくることはない。
誰かが探そうとしても、それを見つけることは出来ないのだった。
しかし、勇者とその一行の足取りは途中まで追うことが出来る。ある街では、勇者が悪徳領主を斃すのを手伝ったとか、ある街では料理に舌鼓を打ち、勇者の名前を使って良いと許可を出したとか、その伝説は大小あれど幾つかの街で見つかっている。
しかし、ある街を最後に勇者達の足取りは綺麗さっぱり消えてしまっている。
その街の人々は、勇者の消失に協力したといわれのない噂を立てられたことがある。しかしながら、そんなことがあったとしても――結局勇者は姿を見せなかったし、勇者の足取りを知っている人間が出てくることもなかった。
その街の汚名が晴れた後、『勇者が姿を消した街』として、一転観光地へと変貌を遂げるのだった。
その街の名前は、ラスザッド。
古い町並みが残る、王国随一の古都である。
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